オトメは温和に愛されたい
 それから真剣な眼差しで私を射抜いて、「まぁ今はともかく、結婚後は嫌とは言わせねぇから」って……嘘ぉ……。

「そ、そんなにしたら……私、死んじゃうよ?」

 恐る恐る言ったら「気持ち良すぎて?」って笑われた。

 そういう意味ではないのに……。
 温和(はるまさ)のバカ。

 両想いになるまでの温和(はるまさ)って、もっと違う意味で意地悪で、こんな風にストレートに気持ちを伝えてこない人だった。
 もちろん、大好きな人に求められるのは堪らなく嬉しいけれど、それにしても限度というものが……。

 実家のマンションの来客用駐車スペース。
 一応立体駐車場内の一画にあるから薄暗いし、そんなに目立ちはしないけれど、それにしたって車内だもの
 どこに誰の目があるとも限らない。
 このままここにいて温和(はるまさ)に変なスイッチが入ったら大変なので、「早く帰ろう?」って言ってみた。

「だな」

 温和(はるまさ)もアパートの方が落ち着くと判断してくれたのかな。

 案外すんなり話に乗ってくれてホッとする。

 でも、
「そんな早く()()()なんて、音芽(おとめ)さんのエッチ」
 って、盛大な勘違いです、温和(はるまさ)さんっ!!
< 350 / 433 >

この作品をシェア

pagetop