オトメは温和に愛されたい
　別に旧姓のままの登録でも当面のところ問題ないけれど、出来れば入籍とともに教員免許の名前の書き換え手続きもしてしまいたい。

　私、入籍したならちゃんと、霧島(きりしま)音芽(おとめ)になりたいの。

　それなりに、しなきゃいけないことが山積みなのよ？

　あ、でも……ひとつだけホッとしているのは、公立の学校と違って、私たち、結婚したからと言ってどちらにも異動はないはずってこと。
　新年度から担当学年は分けられてしまうだろうけれど、それでも環境ががらりと変わってしまうわけじゃない。

　新居へのお引っ越しなどを考えるにしても、この“転勤がない”というのはかなり大きくて。
　私は今のアパートの、どちらかの部屋を引き払って同居でいいんじゃない？って思ったんだけど、温和(はるまさ)はそれじゃ嫌みたい。

　せっかく新婚生活を始めるんだから、マイホーム購入も視野に入れて動こうって言うの。

　温和(はるまさ)、やっぱり私とのことになるとお財布の紐が緩みがちな気がする。
　私がしっかり締めないと、って改めて思わされてしまった。
　とりあえず結婚式の費用のこととかもあるし、無駄遣いは避けたいもの。

　式場にもいくつか目星を付けているけれど温和(はるまさ)は海外挙式もいいなとか言うし。
　私はお互いの両親が幼い頃からかけてくれている、とある式場の互助会費を使ってのお式でいいんじゃないかな？って思ってるの。

　そう言ったら、温和(はるまさ)ってば少し考えて、「週末にそこ、下見に行こう」とか言い出す始末。
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