オトメは温和に愛されたい
***

「ありがとうございました。――末長くお幸せに」

 店員さんの言葉に見送られて、温和(はるまさ)とふたり、小ぶりの白い紙袋を手に歩く。
 中には小さなリボンのかかったリングケースがひとつ。
 でももともと中に入っていた結婚指輪(ペアリング)はお互いの指に嵌まっていて、代わりに今まで私が仮初(かりそめ)でつけていたクローバーリングがポツンと収まっている。

「あの、温和(はるまさ)、メッセージ……」

 私は温和(はるまさ)が私になんという言葉を贈ってくれたのか、気になって仕方がないの。
 なのに温和(はるまさ)はなかなかそれを確認するのを許してくれなくて。
 温和(はるまさ)は気にならないのかな、私からの――。

「せめて車に乗るまで待てねぇのかよ」

 このところの話し合いで散々突っ走り発言をしまくってきた温和(はるまさ)とは思えない慎重派な言葉をくれる彼に、私は「おや?」と思う。

 でも、やっぱり私は早く知りたいの。
 温和(はるまさ)のくれた文言(メッセージ)
 はやる気持ちを抑えきれなくて、温和(はるまさ)の手を引っ張るように「早く早く」って急かしながら歩いたら、思いっきり溜め息をつかれてしまった。

「――お前さぁ、自分がどんな言葉選んだのか、目の前で相手に見られるの、恥ずかしくねぇの?」

 あら。温和(はるまさ)さん。
 耳まで真っ赤ですよ!?

 でもそれって、裏を返せば温和(はるまさ)が一生懸命私のために一番いいと思うメッセージを選んでくれたってことだもんね。

 そう思ったら、やっぱり私の大好きな人は本当に可愛いなって思ってしまったの。

「その言葉を聞いたらますます温和(はるまさ)の目の前で見たくなりました♥」

 ニコッと笑って言ったら「お仕置き決定な」ってボソッとつぶやかれた。
< 359 / 433 >

この作品をシェア

pagetop