オトメは温和に愛されたい
「お前、絆創膏ぐらい貼っとけよ。なんでそのままなんだ」

 そこまで言って、ハッとしたように、「もしかして絆創膏すら買い置きしてないとか言わねぇよな?」と睨まれる。

 ひえー。

「持ってません、行きがけに買おうと思ってましたっ」

 言えば、当然のように叱られた。

 その口調は学校で子供たちを叱る時の先生モードの温和(はるまさ)で。

 この年になって、先見(せんけん)(めい)がないとか言って、子供みたいに叱られるとは思ってもいませんでした。

 ごめんなさいっ。

「そもそも――こんな状態だったら歩くのもしんどいだろーが。何ですぐ、俺に言ってこなかった?」

 とか、私、そこまでメンタル岩石じゃないですっ。

「だって温和(はるまさ)……、昨夜」

 言おうとして、膝に消毒をしてくれている温和(はるまさ)から睨むように見上げられて、私は何も言えなくなる。

 温和(はるまさ)の中では、昨夜私にキスしたことも、それで私が泣いたことも、無かったことになってしまっているのかな。

 考えただけで、何だか胸の奥がギュッと苦しくなった。きっと消毒された所が()みて痛いからだ。
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