オトメは温和に愛されたい
***


霧島(きりしま)先生のお怒りはごもっともです」

 温和(はるまさ)辛辣(しんらつ)な物言いに、でも鶴見先生は少しも怯まなくて。
 むしろ、いっそ穏やかにすら思える声音でアッサリと温和(はるまさ)の怒りを受け入れた。


 そうして小さく吐息をついてから、

「僕は正直今でも人を愛するといいうことがイマイチ理解出来ていないです。ですがそれでも――。そうですね。例えば……撫子(なでしこ)が他の男に、鳥飼(とりかい)先生と同じ目に遭わされたりしたらって考えたら腹立たしいとは感じます。……これが霧島(きりしま)先生と同じ感情かどうかはまだよく分からないですが、相手をぶん殴ってやろうかって気持ちにはなりますので」

 と続けて――。
 あ、今はこのザマなんで無理ですけど……と言って、怪我をした片手を上げて苦笑する。

 私はそんな鶴見(つるみ)先生を見て、心底ホッとしたの。

 なっちゃんは……きっと鶴見先生にとって特別な存在になってる。
 そう、思えたから。


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