オトメは温和に愛されたい
***

 結婚式は沢山の人に囲まれて、とても(なご)やかに進んで。

 バージンロードを父に手を引かれて歩いたときは、お父さんが緊張しすぎて転んでしまうんじゃないかとソワソワしてしまった。

 打ち合わせのときからすごくガチガチになってるな?とは思っていたけれど、あれほどとは思わなくて……。

 後からカナ(にい)が、「俺が親父の代わりに手ぇ引いてやればよかったな」って冗談めかして言ったけど、そっちの方が安心だったかもしれないとか思う程度には、お父さん、グダグダでした。

 お母さんに、お父さんは音芽(おとめ)のことが可愛くて仕方なかったから余計に緊張したんでしょうね、許してあげてねって言われたけれど……でも、だったら余計にしっかりしてよぉ~って思っちゃった。
 塩対応な娘でごめんなさい。

 とはいえ、お父さんが緊張しまくってくれたお陰で、私は逆に落ち着いて式に(のぞ)めたの。

 お父さんから温和(はるまさ)に、引かれていた手がバトンタッチされたとき、お父さんがあんまりにも泣いちゃって……、私もつられてウルウルきてしまったのは誤算でした。

 ヴェールアップしてくれたとき、温和(はるまさ)から小声で、「泣くな音芽(おとめ)、化粧が崩れるぞ」って注意されてしまったの、多分一生忘れません。
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