オトメは温和に愛されたい
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普通赤ちゃんが生まれたその日に家族以外が病院へお見舞いに行くことなんて余りないみたいだけど……鳥飼家と霧島家においてはそういう他人行儀なこと、言わなかったみたい。
「美奈代ちゃん、赤ちゃん産まれたって! ハルくん、今からお母さんと一緒に赤ちゃん見に行こう!」
そう言われて、半ば強引に病院へ連れて行かれた日のことを、温和はぼんやりと覚えていると話してくれて。
いつもなら一緒に遊んでいる幼なじみの奏芽の姿が朝からなかったのを不思議に思っていたけれど、それとお隣のおばさん――美奈代さん――の出産が繋がっているなんて、たった2歳の温和には分からなかったらしい。
ただ、奏芽がいないし退屈だから行ってもいいかな、ぐらいの気持ちでおかあさんに手を引かれて病院へ向かったんだとか。
病院に着くと、奏芽も来ていて、ああここに居たのかって思っていたら、幼なじみにしては珍しいくらいに目をキラキラさせて、「ハル、妹! 俺の!」って聞かされて。
言われても、温和はやっぱりそれほど興味が湧いてこなかったらしい。
でも、お母さんに抱き上げられて、新生児室で眠る私をガラス越しに見た瞬間、窓ガラスの存在も忘れて身を乗り出しておでこをぶつけてしまったらしい。
温和と同じようにお父さんに抱かれて生まれたばかりの妹を見ていたお兄ちゃんに大笑いされたのを、今でも鮮明に覚えているんだとか。
普通赤ちゃんが生まれたその日に家族以外が病院へお見舞いに行くことなんて余りないみたいだけど……鳥飼家と霧島家においてはそういう他人行儀なこと、言わなかったみたい。
「美奈代ちゃん、赤ちゃん産まれたって! ハルくん、今からお母さんと一緒に赤ちゃん見に行こう!」
そう言われて、半ば強引に病院へ連れて行かれた日のことを、温和はぼんやりと覚えていると話してくれて。
いつもなら一緒に遊んでいる幼なじみの奏芽の姿が朝からなかったのを不思議に思っていたけれど、それとお隣のおばさん――美奈代さん――の出産が繋がっているなんて、たった2歳の温和には分からなかったらしい。
ただ、奏芽がいないし退屈だから行ってもいいかな、ぐらいの気持ちでおかあさんに手を引かれて病院へ向かったんだとか。
病院に着くと、奏芽も来ていて、ああここに居たのかって思っていたら、幼なじみにしては珍しいくらいに目をキラキラさせて、「ハル、妹! 俺の!」って聞かされて。
言われても、温和はやっぱりそれほど興味が湧いてこなかったらしい。
でも、お母さんに抱き上げられて、新生児室で眠る私をガラス越しに見た瞬間、窓ガラスの存在も忘れて身を乗り出しておでこをぶつけてしまったらしい。
温和と同じようにお父さんに抱かれて生まれたばかりの妹を見ていたお兄ちゃんに大笑いされたのを、今でも鮮明に覚えているんだとか。