オトメは温和に愛されたい
「お前、ちっさくて皺くちゃですごく弱々しく見えたんだよ」

 私が生まれた時、新生児室には私の他に3人の赤ちゃん――いずれもたまたま女の子――が並んでいたらしい。
 でも、その中のどの子よりも、私は小さくて未熟に見えたのだと温和(はるまさ)が言った。

 私は出生体重が2600g代で、3500gを越えていた兄と比べて、確かに物凄く小柄だったと聞いている。

奏芽(かなめ)の妹なのに、だぞ?」

 私の手をギュッと握って真剣な顔をしてくる温和(はるまさ)に、私はドキドキしてしまう。

奏芽(かなめ)ってさ、線は細いけど全然(はかな)い感じしねぇじゃん? っていうかむしろ骨太で性格も図太いし、背だって俺より高いくらいだったから……。勝手にその妹も大きいんだろうなって思ってたんだと思う」

 2歳の頃だし、ハッキリとは覚えてないけど、とにかく「小さい」と感じたのは覚えているんだ、と温和(はるまさ)が吐息を落とした。
 その時は可愛いとかそういう気持ちは全然なくて、ただただ小さくて弱々しい生き物にわけもわからず心奪われたらしい。

「幼かったしな、恋心とかそういうのでなかったことだけは確かなんだけど……」

 双子のように一緒に育ってきた奏芽(かなめ)の家に行くと、その小さくて弱々しいのがいつもそばにいて……気が付くと自分のことを見つめているように思えたのだと温和(はるまさ)が苦笑する。

「大きくなって知ったんだけどさ、新生児の頃ってほとんど目、見えてねぇのな。ってことはあの時感じていたお前からの視線って……俺の勘違いだったんだと思うんだけど……そんなん分かんねぇし、何かやたらとソワソワしたっちゅーか」

 赤ちゃんの頃から私は目が大きくてぱっちりしていたのだと言って、温和(はるまさ)が笑った。
 私たちはよく似た兄妹だけど、目だけはシャープな目をした兄とは似ていないと、小さい頃からよく言われたっけ。
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