オトメは温和に愛されたい
Epilogue
音芽(おとめ)、ありがとう」

 潤んだ目をした温和(はるまさ)にギュッと手を握られて、私は淡く微笑んだ。

 温和(はるまさ)が見つめる先、私のすぐ横に小さな小さな手が見える。

 白いおくるみに包まれたその手の持ち主は、真っ赤でシワクチャで、髪の毛もしょぼしょぼっとしか生えていなくて。

「お前に初めて会った時を思い出すな……」

 温和(はるまさ)がポツンとつぶやいて、私はぼんやりとそんな彼を見上げる。

「新生児室で初めて見たとき。……お前本当小さくてシワクチャだった」

 汗で額に張り付いた私の髪の毛を指先でそっと払い除けるようにして、温和(はるまさ)が私を見つめてくる。

「あん時はガキで分かんなかったけど……お前も出生体重、少なかったらしいな」

 3000gある赤ちゃんと、2500g前後しかない赤ちゃんって、やはり肥え方に差があって……出生体重の小さな赤ちゃんは、ほっそりしていて肌がムチムチと張っていない感じがするものらしい。

「最近の赤ちゃんはそれでも俺たちの頃よりずいぶん丸くなったらしいぜ。現にこの子もすげぇ可愛い」

 言って、私の横の赤ちゃんを愛しそうに見つめる温和(はるまさ)を見上げながら、それって私の方がもっとシワクチャだったって言いたいのかしら……。
 ぼんやりした頭でそう考えて、失礼しちゃうわ、と思った。
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