オトメは温和に愛されたい
鳥飼先生、大丈夫ですか?
 温和(はるまさ)に支えられるようにして職員室に入ると、すぐさま二年三組担任の鶴見(つるみ)先生が駆け寄ってくる。

「と、と、とっ、鳥飼(とりかい)先生っ、どうなさったんですかっ」

 いつも思うんだけど、鶴見先生、黙っていれば温和(はるまさ)と同じくらい長身で、顔も結構かっこいいのに、口を開いたら心配性で落ち着きがなくて。
 その上繊細過ぎて頼りない印象になってしまう。

 年齢は私よりひとつ上。
 でもここへ来た初日の日が同じで、私立ゆえに公立校と違って転勤がない――メンバーの入れ替わりが少ない――ここでは、貴重な同期といってもいいのかな。

 下の名前は大我(たいが)さんといって、何となくトラ(タイガー)を彷彿とさせられる強そうな名前なだけに、もったいない。

 もう少しどっしり構えていたら、きっとモテると思うんだけどなぁー。……残念っ。

 そんなことを思いながら、思わず立ち止まってしまう。

「昨日転んでしまいまして……膝、思いっきりやっちゃいました」

 もぉー、ドジでホントすみませんっ!

 いつまでも温和(はるまさ)にくっついているのも申し訳ない気がして、私はへらりと笑いながらそう説明しつつ、温和(はるまさ)の手からそっと離れた。

「はる、……霧島(きりしま)先生、御迷惑をおかけしましたっ」

 休み明け。ぼんやりしていて危うく温和(はるまさ)、と呼びそうになって……慌てて霧島先生、と言い直す。
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