オトメは温和に愛されたい
「あ、怪我と言ってもそんな大したことじゃないんです。昨日ちょっと転んで膝を擦りむいてしまって。傷自体は大したことなかったんですけど、思いの外強く打ち付けてしまったみたいで……」

 少し腫れちゃいまして……と言うと「それは大変です! 痛みが引かれるまでは安静になさらないと」と、先ほど温和(はるまさ)に言われたのと同じことを言われてしまった。

「本当は冷やすのがいいんでしょうけど、傷があっては湿布なども無理ですもんね。あまり腫れが引かないようなら病院も視野にいれてくださいね」

 ほわっと微笑まれて、私はその笑顔に見惚れてしまう。

 逢地(おおち)先生、ゆるっと編み込んで後ろで一つに束ねられた長い黒髪が、女性らしくて本当に素敵だ。
 私にはない、落ち着いた大人の女性らしいしっとりとした色香があって、同性の私でもいいなぁと思ってしまう。

 きっと世の男性も大多数はそちら派だろう。

 少なくとも――道端で転んで色気のないショーツをさらす私なんかよりは。

 そこまで考えて、温和(はるまさ)をちらっと見ると、私はほうっと溜め息をついた。

 下着、もう少し色っぽいの、買いに行こう。
 見せる予定なんてないくせに、そんな風に思った。
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