オトメは温和に愛されたい
*約束を破ったんだ。覚悟は出来てるよな?
 室内に入るなり靴を脱がされて足元に転がされる。

「あ、あの、温和(はるまさ)っ?」

 さっき耳元でささやかれた言葉の真意が分からなくて、私は彼の一挙手一投足が気になって仕方ない。

 お仕置きって……座らされてお説教されたり……する、のかな。
 仕事でミスをしたときに、児童らが下校した後の教室で懇々(こんこん)とお説教をされたことがある。それを思い出してあーん、と泣きたくなる。
 せっかく仕事から帰ってきてゆっくりできると思ったのに〜。お腹も空いたのにぃ〜。
 そんなことを思ったけれど、もちろん口には出せない。
 神経を逆撫でしたら状況が悪化するだろうことは分かり切っているから。

 温和(はるまさ)は私を横抱きにしたまま無言でリビングを突っ切ると……。

 あ、あのっ、ちょっと待って! ここっ。

「は、温和(はるまさ)っ、これは……えっと……早目にその、ね……寝ろってこと、かな?」

 安静にしてろっていう言いつけを守らなかった腹いせなの?

 乱暴にベッドに放り投げられて、私はさすがに戸惑ってしまう。

 お小言ならリビングで聞きます、よ?
 足、確かにまだ痛いけど……別に寝そべらなくても平気、だよ?

「まだお風呂にも入ってないし……お腹も空いてるし……さすがに十九時(7時)にもなってないからまだ眠くないんだけど、な?」

 全く温和(はるまさ)さんってば、私をどれだけお子様だと思ってるんですかね?
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