オトメは温和に愛されたい
「何を隠してるのか知らねぇけど……これで当分は人前で服脱ぐの、無理になっただろ。バカ音芽(おとめ)

 吐き捨てるようにそう言われて、私はきょとんとした。
 人前で……服を、脱ぐ?
 え? それって……どういう、意味?
 体育の時なんかの着替えの話……?

「は、温和(はるまさ)……、私いつもちゃんと更衣室で着替えてるよ? 女性同士だからってわざわざ裸の見せ合いっこなんてしないし、温泉旅行に行ったりする予定もないよ? なのに……何でそんな意味のない意地悪したの?」

 服は依然として両手首にまとわりついたままで、手のひらで胸を覆うことはできなかった。でも、隠さないでいるのはさすがに恥ずかしい。
 私は何とか腕を下ろして、手首に服を巻き付けたまま胸の上に下ろすと、懸命に乳房を両腕で覆うようにしながら、温和(はるまさ)に問いかける。

「お前、……鶴見(あの男)とっ、何かあるんじゃないのかよ?」

 決まり悪そうに私から視線を逸らして温和(はるまさ)がそう言ったとき、私は彼が何を気にしているのか、やっと分かった。

 私が逢地(おおち)先生と温和(はるまさ)のことを気にしているように、もしかして温和(はるまさ)も私と鶴見(つるみ)先生に何かあるんじゃないかと勘繰っているって……こと?

 でも、そんなことってあるのかな?

 それじゃあ、まるで――。
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