オトメは温和に愛されたい
 鶴見(つるみ)先生のこともしんどいけれど、一番悩みの種なのはタガが外れたみたいに私に触れてくる温和(はるまさ)だ。
 あの服を返した日以降にも、何度か温和(はるまさ)から隣に呼びつけられて鶴見先生とのあれこれを聞かれたりしているけれど、私も馬鹿じゃない。温和(はるまさ)の部屋に上がり込んだり、温和(はるまさ)を家に招き入れたりするのは避けるようにして過ごした。

 そもそも! 私、気持ちが通じ合った相手としかああいうエッチなこと、したくないの。
 たとえ相手が大好きな温和(はるまさ)であってもそれは譲れない。

 いや、温和(はるまさ)だからこそ、かもしれない。

 男の人はみんな相手が誰であれ、ああいうこと、したいって思うものなのかしら。
 さっきも同じようなことを考えたのを思い出してグルグルしているなぁと溜め息を落とす。

 そこでふとカナ(にい)のことを思い出した私は、危うく「お兄ちゃんに聞いてみようかな」とか魔がさしてしまいそうになってその思考回路に驚いた。

 あーん、もう! 何考えてるの! そんなことしたら、絶好のからかいネタだわ。
 あり得ないっ。大丈夫? しっかりして、私!

 でも、じゃあ誰に聞くの?
 温和(はるまさ)本人はあり得ないし、鶴見先生に聞いたら……そういうことをして欲しいのだと変に誤解されてしまいそうで怖いし。

 なにこれ。八方塞がり――?
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