オトメは温和に愛されたい
 私、温和(はるまさ)が何を考えてあんなことをしてくるのか知りたい。
 私たちは兄妹(きょうだい)ではないのだと、私に思い知らせるための行為だと……確か最初の時に言われた。
 確かに兄が妹にあんなことしたらダメでしょうよ。
 でも、じゃあ他人ならしてもいいの?って考えたらやっぱりそれもダメでしょ。

 なのに何で温和(はるまさ)、あんなこと続けてくるの? 私に訴えられるかもしれない、とか思わないのは何で?
 私はそんなことしないとタカを(くく)ってるの?
 その自信の根拠は何なの?
 それを崩せたらあんなこと、されなくなる?
 探りたい。温和(はるまさ)の変な自信の根拠。

 でも、深入りしたら返り討ちに遭ってしまいそうで怖い。

 やっぱり佳乃花(かのか)と一路《いちろ》に相談するのが一番な気がする。

 そう思ったら、今すぐにでも二人に会えないのが本当辛かった。


***


 家からほど近いところにある公園前にあるバス停。

 そこに約束の時刻の十分前に到着した私は、鈍色(にびいろ)の空を見上げて溜め息を落とす。
 いっそザァザァ降りだったなら、それを言い訳に今日は延期しません?とか言えたのに。

 パンケーキは食べたいけれど、鶴見(つるみ)先生と……だと思うと気が重い。

 ついでに……。

 あたりをキョロキョロと見回してみたけれど温和(はるまさ)の姿はなくて。

 ねぇ、温和(はるまさ)、一緒に来るんじゃなかったの?
 俺たちも、っていうのはどこから合流する話だったの?


 あれこれ考えてソワソワしていたら、前方からモスグリーンのプレマシーが近付いてくるのが見えた。

 前に一度乗せてもらったことがあるから分かる。

 鶴見先生の愛車だ。
< 81 / 433 >

この作品をシェア

pagetop