オトメは温和に愛されたい
 告白した相手に送っているつもりの鶴見(つるみ)先生からのメッセージと、同僚と事務的な連絡を取っているだけのつもりだった私。

 何でこんなに馴れ馴れしいんだろう?ってずっと思っていた自分に喝を入れたい。

 というか……。
 鶴見先生に何気なく返した言葉の数々は、思わせぶりにはなっていなかっただろうか。そんなことがふと気になってしまう。

「思いを伝えはしたものの、全然イエスともノーとも言ってもらえないからさ、何でかなー?とは思ってたんだよ。――まさか伝わってなかったなんて」

 鶴見先生が溜め息混じりにそうつぶやいた時、信号が青になって車が進み始める。

 まぁあの時、霧嶋(きりしま)先生が乱入なさってちょっとゴタついたもんねー、そうかそうかーと独り言のように言う鶴見先生から、私は何となく目が離せなくて。

「あのさ、ちょっとどこか、ゆっくり話ができるところに停まっても……いいかな?」

 前方を見つめながら問われて、私は「はい」とうなずいた。

 わーん。私のバカ。何やってるのよ……。

 パンケーキ屋さんに行く前に、告白への返事を白黒付けさせたいってことだよね、きっと。

 もちろん、言うまでもなく私の答えはノーに決まっているわけで……。
 だとしたらそのあと、結構気まずくなってしまうかもしれない。

 でも仕方ないよね。
 そうなったらそうなったときのことだ。

 思いを伝えてくれた鶴見先生に、私も真摯(しんし)に向き合おう。
 それが礼儀だもん。

 鞄の持ち手をギュッと握りしめて、そんな風に思った。
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