オトメは温和に愛されたい
***

 パンケーキ屋さん、結局あの後すぐに来てしまった。

 お腹、空いていないけれど、甘いものは別腹だし、この二人となら変に気も遣わないで済むからいけそうな気がする。

 というより、お昼を抜いてでも好きなのを食べたいっ!と思えるようなメニュー一覧に、一人目がハートになってしまう。

「どれもめちゃくちゃ甘そうだな」

 カナ(にい)がパンケーキ食べに来てそれ言っちゃう?というぼやきと共にメニューと睨めっこしているのを正面に、私は温和(はるまさ)と横並びの席に着いている。

「あ、でもこれとか良くね!? パンケーキとキノコチーズオムレツ! あ、ふわとろオムレツも捨て難いな。なぁ、ハルならどれにする?」

 メニューを指差しながらカナ(にい)温和(はるまさ)の意見を聞く。

「あ? 俺はどれでも構わねぇけど……」

 気のない返事をする温和(はるまさ)をちらりと盗み見て、私、恐る恐る提案をしてみる。

「あの、みんなで気になるの頼んで、シェアとかどう?」

 言った途端、カナ(にい)が「あらっ。音芽(おとめ)ちゃんのエッチ!」と言ってきて。

 びっくりして「え!? 何が!?」と聞いたら、「だって、アンタ、お兄ちゃんたちと間接キッスしてやろうって目論(もくろ)んでるってことでしょう?」ってニヤニヤするの。

 もう、いい加減そのおネエ言葉やめてよ。落ち着かないじゃない。

 そう思って睨む私を横目に、「いやーん、もうふしだらな妹でお兄ちゃん、恥ずかしいっ!」とかクネクネするのを、絶対わざとからかっているだけだと分かっていながら、思わずムキになってしまう。
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