ナナシからの手紙
ナナシの正体
みおは家に帰ると、鏡の前に座ってコンタクトをはずしました。

髪もぐちゃぐちゃにして元に戻しました。

「探しものは見つかったかなぁ?」

ドキッ。

後ろから声がしました。

鏡のなかに、笑顔で立っているお母さんの姿が見えました。

「え? あれ、お母さんだったの。もー、はじめ読んだとき怖かったんだからっ」

お母さんは舌を出しながら、

「さぁ、どうかなぁ」

「ええっ、何それ?」

「さては、手紙の裏を見なかったかぁー」

「え? 入ってた封筒の裏じゃなくて?」

「そう、書かれていた手紙の裏側よ」

みおはあわてて、手紙の裏を見ました。

そこには「みお」と彼女の名前が書かれていました。

え? どういう意味?

みおの頭のなかは混乱しました。

探すのはまるちゃんでなく、わたし自身だったの? 

「でも、わたし、ずっとここにいたよ?」

お母さんは少し首を傾げながら、

「ほんとかなぁー、みおはずっとここにいた? いつも通りだった?」

お母さんにそう言われて少し不安そうな声で言いました。

「わたし、一軍の場所にいったからダメだったってこと?」

「なにそれっ、一軍ってなんのことよ?」


みおは今までのことをお母さんに説明しました。

「なるほどねー、その一軍ってまるちゃんも入ってたんだよねー?」

お母さんは少しいじわるそうな顔で聞きました。

みおは小さく左右に首を振ります。

「みおはその一軍にいてほんとに楽しかったの?」

みおはだまったままでした。

お母さんはやさしい声で言いました。

「みおのことはお母さん何だってわかる。それは、きっとまるちゃんもだよ」

いつのまにか、みおの目に涙があふれていました。

鏡に映る姿がぼやけていました。

「はい、これ使いなさいっ」

と言ってお母さんがメガネを渡してくれました。

そのメガネはまるちゃんと一緒に買ったおそろいのものでした。

「あ、ありがとう」

みおはメガネをしっかりとかけました。

「みお、みーつけた! でしょ?」

お母さんが頭をなでながら言いました。

鏡のなかのみおの髪はぐちゃぐちゃで、目も泣いてはれていました。

わたしって、ヘンな顔だなぁ。

これで、一軍だって喜んでたなんて笑っちゃうよ。

みおの目から涙が消えていました。

「お母さん、わたし、、、」

「何も言わないの。鏡をよーく見て。これがみおなんだから」

コンタクトで鏡のなかを見たとき、自分が何だかキラキラと見えました。

今、メガネで見ている自分は何だかポカポカと見えていました。

それは、さっき公園で別れたときに見たまるちゃんの笑顔に似ている、

そう思いました。

「お母さん、わたし明日、まるちゃんにちゃんと謝る」

「そうね、でも、その前に謝るひとがいるでしょー?」

みおは鏡のなかの自分に頭を下げました。

そして、言いました。

「ごめんなさい。戻ってきてくれてありがとうね、みお」

鏡の向こうではお母さんが、みおの頭を優しく撫でていました。
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