私を変えたのは、契約の婚約者。〜社長令嬢は甘く淫らに翻弄される〜

　ランチはいつも売店でサンドイッチやパンを買って、屋上でひとり食べている。
　入社当初、フロアの女性と食堂に行ったときもあるけど、部長や課長のあからさまな特別扱いに不満を持っていたみたいで、直接的なことは言われなかったものの、遠回しに嫌味を言われた。
　それは聞き流すとしても、噂話や愚痴の多い会話に疲れてしまって、そのうち「今日はお弁当だから……」と離れていった。
　
（こうやってうまく人の輪に入っていけないところがダメなんだわ、私は）

　タマゴサンドを食べながらそう思うけど、居心地の悪い雰囲気の中にいるより、ひとりでいた方がいいとも思ってしまう。
　昔からそうだ。
　水鳥川の名前は影響力が絶大で、相手を萎縮させたり、逆に擦り寄られたり、私にとっては迷惑なものでしかなかった。

（女子校時代にも仲いい子はできなかったわ）

　溜め息をつくけど、それが私なんだから仕方がない。
　食事を終えると、私は仕事の続きを始めた。
　やることがあるというのは本当にいい。