私を変えたのは、契約の婚約者。〜社長令嬢は甘く淫らに翻弄される〜
 毎日、真宮部長はどんどん私に仕事を言いつけてくれて、私にわからないことがあれば、丁寧に教えてくれた。
 『お嬢様は勉強熱心だな』とからかいながら。
 仮にも財務部にいたので、金融用語は知っているけれど、投資関連のことはまったく未知だった。
 慌てて、何冊か本を買ってきて勉強しているけど、まだまだ知識が追いついていない。

 最初はうらやましいと言っていた女子社員も私の仕事量を見て、口をつぐむようになった。
 常にどこかに問い合わせたり、資料を取り寄せたり、他部署に照会したりしながら、キーボードを叩き続ける。
 宇部部長が心配して、私に尋ねてくるぐらいだった。
 でも、真宮部長は過度な仕事を押しつけることはなく、不思議なくらいに、集中したら定時で終えられる絶妙な仕事量を与えてくれていたので、宇部部長には問題ないと伝えた。
 そのくせ、真宮部長は自身ワーカーホリックのようで、朝早くから遅くまでスマホやパソコンで全世界の金融情勢を見張っていた。
 世界は二十四時間動いているからな、と。
 そして、目が疲れるのか、よく目元を揉んでいた。
 常に目にクマがあるのも、そのせいみたいだ。
 


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