私を変えたのは、契約の婚約者。〜社長令嬢は甘く淫らに翻弄される〜
「あの、これ、よかったら……」

 ある日、私は真宮部長に目薬を差し出した。
 そんな疲れ目なのに、目薬を使っている形跡がなかったので、余計なお世話かと思ったけど、私が愛用している目薬を持ってきてみた。
 昔、資格試験の勉強に根を詰めて目が疲れているときに、お手伝いさんから教えてもらったものだ。
 最近、投資本を読んで疲れたときにも使っていて、とても使用感がいい。
 意外とばかりに目薬を見つめたあと、ニッと笑って、真宮部長はそれを手に取ってくれた。

「ありがとう。目薬をしたらいいんだろうなとは思うんだが、つい面倒くさくて忘れてしまうんだ……」

 そのいつもより砕けた笑みに、トクンと心臓が跳ねた。
 真宮部長は早速目薬を使ってくれて、「思った以上にスッキリするな」とつぶやいた。
 持ってきてよかったと私は頬を緩める。
 ふいに、じっと見つめられた。潤った瞳は、より魅力を増していて、吸い寄せられるように、見てしまう。

「な、なにか?」

 ちょっと動揺して問いかけると、なんでもないと、彼は目を逸らした。



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