逆プロポーズした恋の顛末

言葉を失い、助けを求めるようにわたしを見る尽に、軽く頷いてみせる。


「ダメ?」


ごくりと唾を飲み込んで、答えた尽の声は掠れていた。


「いや……ダメじゃない。幸生が……パパと呼んでくれたら……嬉しいよ」

「やったー! ママ! おにいちゃん先生がいいって!」

「よかったね、幸生。ちゃんとありがとうって言った?」

「あ! えっと、ありがとう!」

「こっちこそ……ありがとう」


ぎゅっとしがみつく幸生の頭を撫でる尽の手は微かに震えている。
唇を引き結んで込み上げる感情を堪える表情は幸生にそっくりで、潤んだ大きな瞳はもう少しで決壊しそうだ。

息子の前では泣き顔をさらしたくないかもしれないと思い、尽にしがみつく幸生を引き離した。


「幸生。パパ、ごはんの前にお風呂に入りたいんだって。続きは、ごはんを食べたあとで」

「うん! ごはん食べたら、たくさんお話して、いっぱい絵本読んで!」

「ああ。すぐ戻る」


逃げるようにしてバスルームに消えた尽を見て、幸生は首を傾げて不思議そうな顔をする。


「パパ、そんなにお腹空いてるのかな?」

「そうかもね? 絵本を読んで待ってようか」

「うん!」


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