逆プロポーズした恋の顛末


「そんなことになったら……診療所を継いでくれと、町長直々に勧誘されるかもしれないわよ?」

「初日に挨拶に行った時、もう言われた」

「やっぱり……」

「ジイさんの引退には間に合わないが、選択肢の一つとして考えてはいる。ただ、自分ひとりしか医者がいない環境でやっていけるかと言われると……いまはまだ、正直いって自信満々というわけにはいかない。知識と経験が圧倒的に不足していると自分でもわかっている」


そう言う尽は、自分の力不足を認識しながらも、落ち込み、後ろ向きになっているようには見えなかった。

四年前とはちがい、医師としての自信がついてきているのだろう。
それが、自分のことのように嬉しい。


(所長に言わせれば、まだまだヒヨッ子かもしれないけれど、あの時思った通り、尽はいいお医者さまになってるわ)

「ねえ、尽。戻って来る時には、所長みたいに髭をたくわえておかないとダメかもよ?」

「律がその方が好きなら、いまからでも髭面になってやるよ」

「わたしはどっちでもいいけど。モテすぎて困っているなら、イケメンぶりを隠すのに髭を生やすのもいいかもね?」

「医者だからって、モテるとは限らねーよ」

「またまたぁ」

「律以外にモテても、意味はない。なあ、この一週間、一緒に暮らしてみてどう思った? 俺を幸生の父親だと認めてくれたが、律の夫として合格か? それとも……落第か?」

「…………」

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