逆プロポーズした恋の顛末

それまで、黙って話を聞いていた彼が突然怒ったように問う。


「一個くらい、あんだろ? 叶えたい夢」


夢の一つも抱けないわたしを憐れむのではなく、そんな自分を受け入れて、諦めているわたしに憤っているらしい。


(上から目線で、バカにするか説教するかだろうと思ったのに……)


恋愛に、お金も駆け引きも必要ない。相手を好きだと思う気持ちが一番大事なのだと信じていたのは、遠い昔の話だ。

それなりに、真面目な付き合いをしたこともあるし、寂しさを埋めるためだけの付き合いをしたこともある。セフレ以上カレシ未満のような相手がいたこともある。

ただし、誰とも長くは続かなかった。

好きになった人と結婚して、その人の子どもを産んで、幸せな家庭を持つ――そんな未来は、自分には似合わない。
そんな夢みたいな幸せとは無縁の人生を送るのだろうと、心のどこかで諦めていた。

けれど、自分のことのように憤り、まっすぐに想いをぶつける彼に、都合のいい夢を見たくなった。


「そうねぇ……自分だけでは叶えられない夢なら、あるかも」

「どんな夢だよ?」

「あなたみたいなイイ男と結婚して、彼によく似たカワイイ子どもをゴロゴロ産んで、ふたり一緒に年を取って、しわくちゃで幸せなおじいさんとおばあさんになることかな?」

「…………」

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