逆プロポーズした恋の顛末


帰宅したアパートの郵便受けに分厚い封筒を見つけ、やけにワクワクした様子の幸生にねだられるまま開封すると、中には尽が用意してくれたものが入っていた。

N市までの電車と新幹線の往復チケット。
尽の家までの道順が記された地図。
子どもと楽しめる施設やイベント情報をまとめた手作りの資料。
そして、直筆のメモには、

『連休中、何日か休みが取れた。幸生に、約束どおり水族館に連れて行くと伝えてくれ』

そう書かれていた。

どうやら尽は、あらかじめ幸生に「水族館」へ連れて行くと約束していたらしい。


「むこうへ行ってからの予定は決まっているのかい?」

「尽が、水族館に連れて行く約束をしていたみたいで。海浜公園の中にある水族館では、イルカやアシカ、シャチのショーも見られるみたいですね」

「ショーは、子どもだけでなく、大人も楽しめると聞くよ。尽の休み次第かもしれないが、ほかには? 連休中、ずっとむこうにいるんだろう?」

「いまのところ、水族館以外はノープランです。あまりきっちり計画を立てても、尽の予定次第ではキャンセルになるかもしれないので。N市には、ショッピングモール、遊園地、屋内の施設なんかもあるし、臨機応変に決めたいと思ってます」


尽がまとめた資料には、どう考えても十日間ですべて行きつくせるはずのない量の情報が載っていた。

この先、いつでも機会があると思えば、そんなことにはならないのだろうけれど、時間に限りがあるとなれば、あれもこれもと詰め込みたくなる気持ちはよくわかる。


「まあ、あっちは都会だし、遊ぶ場所には困らないだろう。それで、引っ越しの準備はできたのかい?」

「はぁ、まぁ……ある程度は……」

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