逆プロポーズした恋の顛末
――十五分後。
後片付けを終え、寝室を覗くと、尽と幸生はキングサイズのベッドでぐっすり眠っていた。
(またしても、同じ寝相……)
左右対称の態勢で眠る二人をスマホで撮影し、そっとドアを閉めようとしたところで、ふとベッドサイドのキャビネットに置かれたデジタルフォトフレームに気がついた。
アパートにあるのと同じタイプのもので、画面に映っているのはわたしと幸生の寝顔だ。
(いつの間に……)
ほかにどんな写真を撮っているのか気になって、そっと近づき、画面を操作してみると……。
真剣な表情で絵本を読む姿やお風呂で泡だらけになっている姿。
服を前後ろに着てしまい、照れくさそうに笑っている姿。
幸生の写真がこれでもかというくらい収められていた。
中には、料理しているところ、お風呂上りですっぴんのまま幸生の髪を乾かしているところなど、わたしの写真もあり、思わず削除したくなったものの、何とか堪える。
(わたしと幸生は一緒だから、寂しさもまぎれるけれど……尽はひとりだから、寂しさ倍増よね)
広いベッドでひとり寝る前に、写真を眺めている尽の姿を想像すると、胸が痛かった。
なるべく早く一緒に住み始めたいとは思っていたけれど、無理をしてまで焦って準備しなくてもいいという尽の言葉に甘え、悠長にしていたのが申し訳ない。
帰ったら、いるものといらないものを選別したりせず、所長が言ったように、とりあえず全部箱に詰めてしまおうと決心した。
(さて……二人はしばらく起きないだろうし、いまのうちに荷ほどきしちゃおうかな?)
洗面道具をバスルームの洗面台に並べ、鞄に詰め込んだ着替えを取り出して畳み直したりしていると、リビングのテーブルに置いたスマホが鈍い音を立てた。
表示されているのは見知らぬ番号だが、そもそも誰かから電話が架かってくること自体少ないので、何となく気になって応答する。
「もしもし……」
『伊縫 律さんですか?』
「あ、はい」
フルネームで呼ばれ、戸惑いながらも認めると、相手は四年経っても忘れられない名を告げた。
『ご無沙汰しています。午来です』