逆プロポーズした恋の顛末
「こんにちは」
「こんにちは……」
幸生は、ためらいがちに挨拶を返したが、怖がったり、嫌がったりしている様子はなかった。
「伊縫さん、今日は来てくださってありがとう。まずは、お茶をいかが?」
「ありがとうございます。いただきます」
「幸生くん、りんごは好きかしら?」
「……好き」
「よかった。アップルパイを用意したのよ。飲み物は、麦茶でいいかしら?」
「うん」
「律さんと午来先生には、コーヒーもお出しできるけれど……オススメは紅茶」
「では、紅茶をいただきます」
「わたしも」
「いま準備しますね!」
吉川さんがキッチンへ去り、わたしは幸生の手を引いて、窓辺の彼女へ歩み寄った。
「はじめまして。伊縫 律です」
幸生は、促すまでもなく元気いっぱいに名乗る。
「いぬい こうきですっ」
「元気がいいわね。わたしの名前は、夕雨子です」
「……ゆーこちゃん?」