逆プロポーズした恋の顛末
四年前、尽がわたしの部屋に転がり込んで来る時は、たいていラフな恰好だったし、手土産もコンビニで買ったおつまみやブリトー。高級レストランに行ったこともなければ、高級食材の手料理を振る舞ったこともなかった。
頭では、彼は裕福な家に生まれ育ち、医師になれるほど賢くて、容姿も非の打ち所がない。いわゆるハイスペックなエリートに分類されるとわかっていた。
けれど、その差をまざまざと見せつけられるようなことはなくて……。
(いまにして思えば、尽なりに気を遣っていたのかもしれないわね)
真面目とは言い難い学生時代を送り、女性の扱いにも慣れている彼が、コンビニでブリトーを買い占めたりしていたのは、わたしが好きだから、というのはもちろんあるだろう。
しかし、わたしが受け入れられるものとそうでないものをちゃんとわかっていての、行動だったのだと思われる。
身体が大きくて言動が荒っぽいので、つい見逃してしまいがちだが、相手に合わせて細やかに気を遣い、ちょうどいい距離を保つのが巧いのだ。
(だから、ついズルズルと続けちゃっていたのよね……)
あの頃もいまも、年上のわたしが主導権を握っているつもりでいたけれど、実はわたしの方が彼の手のひらの上で転がされているのかもしれない。
不本意ながら。