逆プロポーズした恋の顛末
守るべきひと SIDE 尽
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大型連休中、外来診療はしていないが、救急搬送の受け入れは当然ある。
総合病院で、入院患者も多いから、常時ある程度の人数の医師が当直にあたっているが、急患、急変が立て続けにあると、猫の手も借りたい状況になる。
救急ラッシュこそなかったが、入院患者の急変があったり、真夜中にタクシーで駆け込んできた急患がいたりと、慌ただしかった宿直勤務を終え、引き継ぎを済ませた時には午前九時を少し回っていた。
(車はここに置いて、どっかで朝メシ食ってから、本屋に寄って幸生の絵本を買って……ついでに、律が好きなブリトーも買っていくか。田舎にはコンビニないから、長い間食ってねーだろうし)
家で待つ息子と未来の嫁(になる予定)の顔を思い浮かべ、つい頬が緩む。
四年前に、別の男の愛人になると言って別れを切り出したはずの律が、自分の息子を産み、しかも自分の祖父が親身になって面倒を見ていたと知った時の衝撃は、まさに人生がひっくり返るほどのものだった。
なぜ教えてくれなかった、と恨めしく思ったが、あの頃の自分がいかに頼りない男だったかは十分自覚している。律を責める資格なんてないと重々わかっていた。
律のことだから、よくよく考えた末での行動だと思われ、ただ謝ることしかできなかった。