逆プロポーズした恋の顛末


「いまからか……?」


留学先での経験や日本ではまだ導入されていない治療法などの話を聞きたいとは思うが、急すぎる。


『ええ。相談したいこともあるし、大事な話もあるし』

『大事な話……?』


四年も疎遠だった相手に大事な話があると言われても、ピンと来ない。


『尽はすっかり忘れているんでしょうけれど、わたしたちの縁談、破談になったわけじゃないのよ? わたしが帰国したら、もう一度考えるってことになっていたでしょう?』

「……そんな話、したか?」


確かに、四年前、大学時代の恩師であり、彼女の父親でもある森宮教授から、どういうルートを経たものか、祖母を通じて縁談を持ちかけられた。

いい友人で、それ以上でもそれ以下でもないからと、祖母には断るように頼んだが、すんなり聞き入れてくれるような人間ではない。

知らないところで、知らないうちに、両家の顔合わせをお膳立てされて、しかたなく「お見合いごっこ」をすることになった。

これが、まったく知らない仲なら、何もできなかっただろうが、幸いにも気心知れた友人同士。
事前に打ち合わせして、婚約・結婚は回避しようということになった。

見合いの席で、彼女は「留学する予定なので、まだ結婚はできない」と言い、自分も「研修中だから、まだ結婚は考えられない」と言い、それきり話は流れた……はずだった。

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