逆プロポーズした恋の顛末
義父に対する、物腰柔らかで、温厚そうな人だという第一印象は、あっけなく覆った。
辛辣な言葉を吐き出すその顔には、相変わらず柔らかな笑みが浮かんでいるし、その口調は穏やかだ。
だからこそ、きっぱりとした拒絶が痛いほど感じられる。
黙り込んでしまった所長が気の毒になってしまうほどに。
義父の言うとおり、離婚した配偶者は「他人」。
子どもの父親と母親という関係性は残るが、お互いの人生にかかわり合う必要も義務も、権利もない。
極端なことを言えば、どこで何をしていようと、生きていようと死んでいようと、関係のない人間だ。
けれど、そんな風にきれいさっぱり清算できるかと言えば、そうもいかないのが現実だろう。
その場を支配する重苦しい沈黙に、幸生も違和感を覚えたらしく、お絵描きの手を止めてキョロキョロ落ち着きなくみんなの顔を見まわす。
その様子を見て、義父は小さな溜息を吐いた。