逆プロポーズした恋の顛末
「どうせわたしが説明しなくても、幸生くんや律さんから聞き出そうとするでしょうから、話しますが……母さんは、ここ一年ほど在宅で緩和ケアを受けていたものの、容体が悪化したのでホスピスへ入院しました」
「ホスピス……?」
愕然とする所長に、義父は淡々と事実を伝える。
「わたしも含め、家族の面会は断っています。つい先日入院したばかりなので、いますぐどうこうということはないでしょうが、いつ最期を迎えるのか、誰にも正確な日時はわからない。いま言えることは、おそらく来年までは生きられないと思われる、ということだけです。本人は、二十年前に一度は諦めた人生だから、ひ孫の顔まで見られたのは幸運だった。もう思い残すことはないと言っていましたが」
「……二十年前?」
「その時は、治療が功を奏して結局完治したんですが。母さんが離婚を決めたのは、立見総合病院だけでなく、病気になった自分まで父さんに背負わせるのは申し訳ないと思ったからですよ。看護や介護まで押し付けては、気の毒すぎる。いい加減、解放してあげるべきだろう、と」
「…………」