逆プロポーズした恋の顛末
簡単に結論は出たが、人生の大先輩を恋愛初心者扱いして、わざわざ指摘していいものかどうか。
男性の繊細なプライドを傷つけるのは、NGだ。
かと言って、しょんぼりしている所長をこのままにしておくのは、こちらの気持ちが落ち着かない。
(お義父さん! 言い逃げしないで、最後までちゃんと責任持ってください……)
さっさと帰ってしまった義父を恨めしく思っていると、寝室へ駆け込んだ幸生が一枚の絵を持って戻って来た。
「これ! これ、ゆーこちゃんが描いてくれたんだよ! ゆーこちゃんはね、バラってお花が好きなんだって! だから、お手紙じゃなくてバラをあげたらいいと思う! そしたら、見てくれるよ!」
名案だろうと自信満々で提案する幸生に、所長の唇がへの字になる。
「それでも……イヤがられるかもしれないだろう?」
「でも、山岡さんが言ってたよ? 女のひとにだいじな『ぷろ』なんとかするのにもお花がいいんだって」
「ぷろ……?」
一瞬怪訝な顔をした所長は、「ぷろ」が「プロポーズ」のことだと悟るなり、ますます口をへの字にした。
「そんなもの、必要ない」
「でも、ゆーこちゃん、おうちに咲いてたバラがあったらきっと寂しくないよ?」
幸生の言葉に所長は頷かなかったが、じっと手にした薔薇の絵を見つめている。
「……りっちゃんは、どう思う?」