逆プロポーズした恋の顛末


わたしの説明を聞いた尽は、現実問題として「いますぐに」に結婚式を強行するのは無理だと言った。

挙式だけ、と言っても準備は必要だ。
忙しい尽が打ち合わせや準備などに関われる可能性は限りなくゼロに近いから、ほぼわたしひとりで奔走することになるのは、目に見えている。
事故の怪我が治り切っていない状態で無理を重ねれば、回復が遅れるどころか、悪化しないとも限らない。

彼が反対する理由はもっともで、その通りだとは思った。

でも、待てなかった。
夕雨子さんに残された時間がどれくらいなのか、誰にも正確なところはわからないのだから。

疲れたら休むし、具合が悪くなったらちゃんと尽に相談する。
絶対に無理はしないと約束する。

そう言って、半ば強引に「できる限り早急に」結婚式をする合意を取り付けた。

尽は、どんな式だろうとかまわない。わたしがしたいようにすればいいと言ってくれたが、二つだけ条件を付けた。


結婚指輪は、彼が用意したものを嵌めること。

わたしは、必ずウエディングドレスを着ること。


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