逆プロポーズした恋の顛末
二人一緒に苦笑いし、口を噤む。
讃美歌で気を引き締め、聖書の朗読を神妙な面持ちで聞く。
祈祷。続いて結婚の誓いを交わし、署名。
幸生が渡してくれた結婚指輪を交換し、尽がヴェールを上げる。
尽はわざとらしく目を見開いて驚いて見せ、小声で「ひれ伏すのはあとにする」と言ってくれた。
軽くわたしの腰に手を添えて、じっとこちらを見下ろすその表情は、これ以上はないくらいに優しく、温かい。
きっと、わたしも同じような表情をしているのだろう。
「幸せ」は、こんなにもはっきり目に映るものなのだと初めて知った。
誓いのキスは、唇ではなく頬へ。
牧師が結婚を宣言し、一連の儀式が終了した。
大きなハプニングもなく終えられたことにホッとして、尽と二人で列席者を振り返り、一礼する。
「このあと、チャペル前で集合写真を撮りますので、みなさまご移動をお願いいたします」
スタッフの声かけで、みんなそろって退場。
所長の横でお行儀よくしていた幸生を呼び寄せると、「ぼく、パパといっしょだよ! はなむこさんだよ!」と初めての正装にご満悦の様子。
ウロチョロしないよう尽が抱き上げれば、同じく朔哉さんに抱かれていたピンクのドレス姿の千陽ちゃんに目を留めて、「ちはるちゃん、ママといっしょのお姫さまだ! けっこんしきしよー?」と言い出し、列席者の笑いと朔哉さんのひそかな怒りを誘った。