逆プロポーズした恋の顛末
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チャペルの外には、すでに撮影用の椅子や台がセッティングされていて、まず真ん中にわたし、幸生、尽が座り、偲月さんの指示でジョージがみんなをそれぞれ所定の場所に据えていく。
ひと通り配置と衣装を確認したのち、カメラを構えた偲月さんが叫んだ。
「みなさんまずは一枚撮っちゃいましょうか。あ! 澄ました顔しないでくださいねー? いつものだらしなーいお顔でお願いしまーす!」
笑いを堪えるひと、堪え切れずに笑ってしまうひと、いろんな表情のままにシャッターが切られる。
「じゃあ、次は……最愛のものを思い浮かべてください! あ、別に、奥さんとかダンナさん、カレシ、カノジョじゃなくてもいいですよー。正直にいきましょう。ケーキとか、お酒とか、ペットとか。ほんとーに、大好きなものにしてくださいねー?」
「偲月! おまえ、何てことを……」
結婚式で何を言う、と朔哉さんが抗議しかけるが、千陽ちゃんに眉間のシワを指で突かれた途端、デレた。
「ん? どうした、ちぃ」
「パパ、おこってる……」
「いやいや、怒っていないよ。パパの最愛は千陽だよ」
その様子を見ていた人たちから、失笑が漏れた。
「もー、朔哉ってば、うるさいよ!」
「うるさい? 偲月が、非常識なことを言い出すのが悪いんだろう! だいたい……」
「ハイハイ、夫婦喧嘩はヨソでやってちょうだい。みなさーん、深呼吸して! わたしを熱ーいまなざしで見つめて! それから、ありのままの自分で……」
偲月さんと朔哉さんの言い合いに割って入ったジョージが、仕切り始め、みんな彼に言われたとおりに深呼吸し、彼を見つめて次の指示を待ち……。
「美男美女に写るのは、潔く諦めてちょうだい」