逆プロポーズした恋の顛末
「なんで?」
「どうして?」
顔を見合わせ、お互いに訊ねる。
「尽からどうぞ」
「律から先に言えよ」
「でも、」
「先に言い出したのは、律だろ?」
「わかったわよ」
恥ずかしかったけれど、今日は特別な日だし、と思い切って告白する。
「いまにして思えばなんだけど……尽が二度目にわたしの部屋に来た夜。あの、ブリトーを分け合った夜、尽のことを本気で好きになったんだと思うの。だから、二人でブリトーを食べたら、あの時の気持ちを思い出せる気がして。尽は……どうして?」
尽も、照れくさいのだろう。
視線を幸生に向けたまま、告白する。
「同じだ。あの夜、律を手放したくないと思った」
「……そう」
何となく目を合わせずらくて俯いていると、尽が「なあ」と再び口を開いた。
「頼みがある」
「頼み?」
「……もう、逆プロポーズはしないでくれ」
「え?」
驚いて、思わず寄り掛かっていた身を起こし、すぐそこにある尽の顔を覗き込む。
どういう意味なのか。
確信はないけれど、そうじゃないかと思ったことを口にしてみる。
「それって……他の人を好きになるなってこと?」
「そこまでは言ってない」
そう言う尽の顔は、この上なく不機嫌そうで、どう見ても「そうだ」と言っているようにしか見えない。