逆プロポーズした恋の顛末
「でも、つまり……再婚するなってことでしょ?」
「プロポーズしなければ、別に再婚してもいい」
「尽以外のひとを、結婚したいと思うほど好きになってほしくない。そういうことじゃないの?」
「…………」
「ねえ、さっそくブリトー食べる?」
尽は、ぐしゃぐしゃと髪をかきむしり、ヤケ気味に叫んだ。
「そうだよ、俺は、心が狭いんだよ! 律が他の男のものになんのは、我慢できねーんだよ!」
いけないと思いつつも、頬が緩んでしまうのをどうしようもなかった。
「尽、これまで、わたしが自分からプロポーズしたのは、尽だけよ?」
一度目も、二度目も、勢いに任せてのプロポーズだった。
でも、相手が尽でなければ、そもそもプロポーズなんてしなかった。
一緒に過ごすほどに、時を重ねるほどに惹かれていく。
十年後、二十年後、いまよりももっと、愛おしく思い、かけがえのない存在になっていることは、わかりきっていた。
たとえ、ひとり取り残されたとしても、今日の幸せな思い出がある限り、今日から続いていく日々の思い出がある限り、きっと尽への想いはなくならないだろう。
「これから先も、尽以上に惹かれる人は現れないと思うわ」
「先のことなんか、わかんねーだろうが」
不貞腐れたように呟く様子がカワイイ。
つい、その頭を撫でてやるとむっとした顔で睨まれた。
「わかるわよ。だって、幸生がいるもの。尽そっくりの幸生がいるのに、他の男に目が行くわけがないでしょ?」
「幸生は……」
「パパ!」