逆プロポーズした恋の顛末
千陽ちゃんは、家族ぐるみでお付き合いがある夕城家のひとり娘。
父親は『YU-KIホールディングス』の代表取締役社長、母親は国内外で高く評価されているフォトグラファー。正真正銘のお嬢様だ。
その容姿は、父方の祖母――大女優の新井 月子、母方の祖母――元モデル、母親――モデルとフォトグラファーを兼業、という美形の血筋を余すことなく受け継いでいた。
幼い頃は天使そのもので、二十代後半となったいまでは絶世の美女に育ち、言い寄る男は数知れず。石油王やら億万長者やら、求婚者には事欠かない。
が、しかし。
娘を溺愛する父親が鉄壁の守りを張り巡らせ、言い寄る男を片っ端から薙ぎ払い、切り捨て、抹殺しているとかしていないとか。
家から一歩も出したくないというのがその本音らしいが、本人の猛抗議に遭い、渋々モデルとして働くことを認めている。
「何度見ても、お庭の薔薇、すっごくキレイですね! まるで絵を見てるみたい」
「窓枠がちょうど額になるよう計算されているからね」
「こんなお家に住みたいなぁ……」
「夕城家の方が、遥かに豪邸でしょ」
「うちのお庭は、わざと自然な感じにしているんだとわかってはいるんですけど、雑然としすぎてて。散歩するにはいいけれど、こうして眺めるのにはあまり向いてないんです」
「そうね。庭もいろいろだから……。今日は、幸生に会いに?」
「はい。昨日、コウくんが帰国したって、晴旭くんから連絡があったので」