逆プロポーズした恋の顛末
「そ、そうですか! あの、その、こちらこそよろしくお願いしますね」
「親戚のお兄さんが、こんなにイケメンなんだもの。幸生くんが将来イケメンになるのは、まちがいないねー? 律ママ」
幸生と仲のいいサオリちゃんのママに囁かれ、バレるかもしれないという心配は不要だったといまさらながらに気がついた。
(そうだった。所長とわたしは親戚って設定なんだから、尽とも親戚ってことになるんだった……)
幸生が尽に似ていても、不思議はない。
そう思い至って、ホッとした。
「そうかもー。モテモテで困っちゃうかも?」
「そうだよ! いまでも、幸生くんは優しいから女の子たちにモテモテだけど、所長と立見先生を足して二で割った感じになったら、もう最強でしょ? 女の闘いが勃発するって!」
「あはは、そうだねぇ」
しかし、ホッとしたのも束の間、尽がいきなりわたしたちの会話に割り込んで来た。
「そんなに似てますか? 俺と幸生」
「似てるなんてもんじゃないですよ。ミニチュア版!」
太鼓判を押す彼女に、尽は嬉しそうな笑みを返し、怪訝な顔で見上げる幸生に向かって、シャレにならないことを言う。
「だってさ? 幸生。大人になったらこうなって、もっと年を取ったら、ああなるんだってよ?」
自分、次いで所長を指さして見せる尽を幸生はマジマジと見つめていたが、はにかんだ笑みを浮かべて「うん」と頷いた。
そして、わたしが「NO!」と叫びたくなるようなお願いを口にする。
「ママ、きょうは晩ごはん、おじいちゃん先生のところで食べる! おにいちゃん先生もいっしょがいい」
幸生をたしなめる間もなく、すかさず所長が同意してしまう。
「お、いいな! 今日は尽の歓迎会にしようか。山岡さんも呼んで、焼肉だ!」
「やったぁー! じゃあね! ママ。いこ! サオリちゃん」
(ちょ、ちょっと待って、待ってよ!)
わたしが動揺と混乱から立ち直る前に、幸生はサオリちゃんと手をつないで保育園の中へ消えた。