逆プロポーズした恋の顛末
忘れられなかったひと
*******
「それにしても……よく食べたなぁ」
お風呂から上がった所長は、リビングの隣にある客間で眠る幸生を見て、くすりと笑った。
所長の家にお泊まりするのはよくあることなので、幸生とわたしのパジャマや予備の着替え、洗面道具は置きっぱなしになっている。
お風呂からあがった幸生が、髪を乾かしている間に寝落ちしても、困ることはなかった。
「食べすぎで、明日お腹が痛くならないといいんですけど……」
お風呂場で見た幸生のお腹がパンパンに膨らんでいたのを思い、しかめ面になってしまう。
「時間をかけて食べていたし、それほど心配することはないと思うが……。ま、医者が二人いるんだし、何かあっても対処できる。大丈夫だよ」
「そうですね」
「もし、幸生くんの様子が気になるなら、わたしの部屋に連れて行こうか」
「え! いえ、そんな……」
「その方が、尽とゆっくり話せるだろう」
「…………」
「幸生くんの父親は、尽だね?」
念を押すように言われ、頷くしかなかった。
「……は、い」