逆プロポーズした恋の顛末
「え、あの、でも、わたし、女の魅力ってものがだいぶ失われて、て……」
出産後、体重は元にもどったが、あちこちたるんでいるし、肌のお手入れだってろくにしていない。
ネイルもせず、化粧は手抜き。髪だって、前髪や毛先は自分で切りそろえているが、もう一年以上ヘアサロンなんて行っていなかった。
着ている服は、四年前とは大ちがいのファストファッションオンリー。最後にヒールのある靴を履いたのは、いつのことだったか。
尽が知っている「わたし」は、影も形もない。
不機嫌そうに眉をひそめた尽は、そんなわたしの事情など大した問題ではないと言う。
「人間、年取るのは当たり前だ。四年前より若くなってる方が怖ぇよ」
「それはそうだけど! 四年前と比べると何もかもちがいすぎるでしょ!?」
「どこが?」
真顔で問い返され、どんな拷問だと内心悪態を吐きながら、自覚症状を述べる。
「全部よ、全部! 顔も身体もたるみ切ってるし! 肌のハリもツヤもなくて、小じわもでき放題だし! 指もひじもかかともガッサガサ。とても至近距離でお見せできるような状態ではないのよ!」
変化を吟味するように、じっくりわたしを眺めまわした尽は、ひと言。
「つまり、俺がいまの律でその気になれるかどうか、確かめたいってことだよな?」
「えっ!?」
ぐるりと視界が回転し、気がつけばその言葉通りソファーに押し倒されていた。