逆プロポーズした恋の顛末
「ちょ、ちょっと、まっ……そう、そういうことじゃな……っ!」
尽の手が、パジャマがわりのTシャツの裾から潜り込もうとするのを必死に阻止するが、耳朶を食まれて身体の力が抜ける。
「そういうことだろ」
大きな手が昔よりふくよかになった胸を包込む心地よさに、眠っていた欲望が煽られ、そんな自分に戸惑い、焦ってジタバタしてしまう。
「や、……だ、ダメだってば……尽! 幸生が……」
「熟睡してる。今日は、ずっとはしゃぎっぱなしで疲れ切ってるだろ。ちょっとやそっとじゃ起きねーよ」
「で、でもっ!」
「この四年、見た目も中身も完璧な女たちと何度も見合いをした。でも、誰一人、興味を持てなかった。セフレでいいと言う女にも、その気になれなかった。律のことしか、考えられなかった」
何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
今朝から、いろんなことがありすぎて、脳が飽和状態だ。
「あんなにきっぱりフラれても、ずっと引きずってた。忘れたくても、忘れられなかった」
「…………」
「俺がどんだけ惚れてるか、いい加減わかれよ」
「…………」
あっけに取られているわたしの唇に、らしくもない軽いキスを落とした尽は、らしくもなく顔を赤らめてぼそっと呟いた。
「これ以上は我慢できなくなるから、寝る」
わたしを覆っていた熱と重みが消え、階段を上っていく足音が途絶えてから、ようやく呟いた。
「……おやすみ、なさい」