逆プロポーズした恋の顛末

「あそこは、両生爬虫類館(りょうせいはちゅうるいかん)だな。ヘビとか、カエルとか、トカゲとかがいる」


パンフレットを見ながら尽が答えると、幸生は目をキラキラさせてわたしを振り仰ぐ。


「見たい! ママ、行こう!」

「え。や、あのね、幸生、ママはあっちのカフェで待ってるから、おにいちゃん先生と一緒に行って来たらどう?」

(カエルはまだしも……ヘビとトカゲは勘弁してー!)

「えーっ!?」


尽は、わたしの顔が引きつっていることに気づいたらしく、ニヤニヤ笑いながら大ブーイングの幸生を諭した。


「幸生。ママは、たくさん歩いてちょっと疲れてるんだ。だから、俺と二人で見たものをあとで説明してあげればいい。まさか、ママがいなきゃ怖くて入れないとか言わないだろ?」

「言わないよ!」

「そうか。エライ!」

胸を張って主張する幸生に、尽は目を細めて微かに口元をほころばせる。


(尽がいてくれて、よかった……)


どんなに自分が苦手だったり、嫌いだったりするものでも、幸生のためなら我慢する覚悟はあるが、両生爬虫類館に突入せずに済んだのは、本当にありがたい。

仲良く手を繋いで去っていく二人を見送って、ちょっと離れた場所にあるオープンカフェに向かう。

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