逆プロポーズした恋の顛末
尽と一緒だと聞くなり、彼女は眉尻を下げて詫びた。
「気にしないで。いつかは話さなくちゃと思っていたし、むしろ、きっかけをくれてありがとう」
「そう言ってもらえると気が楽になります……。ところで、立見先生は大丈夫でしたか? 朔哉に似て俺様だし、素直じゃなさそうだから、心配で」
偲月さんは、ちらりと「カレシ」から「夫」になったと思われるイケメンを見上げる。
「一緒にするな。俺は、あんなにガラが悪くない」
「でも、大まかな分類では同じ種でしょ」
「どんな分類だ」
「え? 紳士、俺様、チャラ男、いいひと、それ以外。朔哉と立見先生は、もちろん俺様」
「大雑把すぎるだろうが!」
彼は不満一杯の顔で抗議したが、抱いていた女の子が「シロクマ、食べる」と呟いた瞬間、豹変した。
「ごめん、千陽。ママがしようもないこと言い出したせいで、待たせてしまって。パパの膝に座って、シロクマソフトクリーム食べようか。たくさん食べるとおなかを壊すから、ちょっとだぞ?」
「うん」
娘にデレッデレの彼を見て、偲月さんはぼそっと呟く。
「そのうち、詐欺罪で訴えてやる……」
「いくつなの? 千陽ちゃん」
「今年三歳になります。幸生くんとは、学年ちがいの同い年ですね」
「大人しいわね。恥ずかしがり屋さんかな?」
ちらちらとわたしを見ては、はにかんだ笑みを浮かべる様子は、ぎゅっとしたくなるほどカワイイ。
保育園にいる幸生と同じ年の女の子たちは、幸生以上によくしゃべる子が多いから、千陽ちゃんの大人しさは新鮮だ。
「そうなんです。誰に似たのか。保育園にいる間はまだいいですけど、小学校とか大丈夫かなって、いまから心配で……」
「焦る必要はないんじゃない? いまはまだ、言葉にできるのはほんの少しのことでも、頭の中ではいろんなことを考えているんだし、恥ずかしがり屋でも気の合うお友だちはできると思うし」
「そう、ですよね……焦ったってしかたない。千陽には、千陽のペースがある。よその子とちがうのは、悪いことじゃない。個性なんだって、頭ではわかってるんですけど……」