リナリアの咲く季節には、キミが隣に。
——火曜日七時三十分。

花壇の前には南先輩と私がいる。

「南先輩。また今年もリナリアが咲いてますね」

「うん。綺麗に咲いてる。菫ちゃん、リナリアの花言葉覚えてる?」

「もちろんです。花言葉は、“私の恋を知ってほしい”」

「さすが、ご名答」

少し驚いた表情の先輩にムッとした。


「南先輩、私のことバカにしすぎです。先輩に一番初めに教わったことですよ。忘れるわけないじゃないですか!」


ふふっと先輩は笑った。

「そうだったね」


一年前、リナリアを見る先輩の横顔はどこか切なげで、どこか寂しそうだった。


——でも今は違う。

優しい表情で、愛おしそうにリナリアを見ている。

私はそんな先輩が愛おしかった。
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