リナリアの咲く季節には、キミが隣に。
「あっ、白いスミレもある」

紫色のスミレの隣には白いスミレも咲いていた。

小さな五枚の花びらが、重なり合わないように健気に開いている。


スミレは紫色のイメージが強いけれど、白いスミレもまた綺麗だ。

“謙虚”、“誠実”なんて花言葉、私とはかけ離れてるよなあ。


「白いスミレの花言葉は、“あどけない恋”」

「あどけない恋、ねぇ……」

植物に気を取られていた私は、無意識のうちに復唱していた。


「……って、えっ?」

聞き覚えのある声がして振り返る。


「南先輩!!」

思いがけない爽やか王子の登場に、心拍数が一気に上がる。

「あれ、なんで俺の名前知ってんの?昨日教えたっけ?」

「南先輩は、有名人なんです!」

「そう?それは光栄だな」

冗談にもさらっと乗ってくれる先輩に、頬が緩んだ。
< 22 / 123 >

この作品をシェア

pagetop