リナリアの咲く季節には、キミが隣に。
「多少放っておいても育つし、『こぼれ種』っていって……」

「こぼれ種?」

「うん。花が終わって出来た種が自然にこぼれ落ちて、翌年また増えるんだ」

「へぇ〜すごい。また一から種をまいたり苗を植えたりしなくても、自然と更新されて、それで毎年咲いてくれるってことですよね」

「うん。その通り」

「わ〜、経済的でもありますね」

深く考えずに言った言葉を聞いて、先輩は笑った。

「ははっ、経済的かぁ。たしかにね。その観点からは考えたこともなかったな」

「変なこと言ってすみません」

「いやいや、そうじゃなくてさ」

こんなふうに花を語る先輩を見れるのは、きっとこの時間だけなんじゃないかな。

他の人が知らない先輩の顔を、私は知っている。

二人きりの時間も特別感があって嬉しかった。
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