リナリアの咲く季節には、キミが隣に。
——この人はきっと、誰かのことを想ってる。

瞬時にそう思えた。


「……へぇ、詳しいんですね」

「あっ、ごめんごめん。花言葉なんて興味ないよね」

優しく笑った彼から、もう目が離せないでいた。

「私の名前、菫(すみれ)っていうんです。あっ、矢野菫っていいます」

「へぇ、菫かぁ。いい名前だね」

自分の名前が役立つときが来るなんて……

「スミレの花言葉は“謙虚”、“誠実”。自分の名前が花の名前だから、たまに調べたりします」

「おぉ、花好きとしてはなんだか親近感が湧くなぁ」

いまどきの高校生の男の子が花を好きだなんて、珍しいとは思った。

でも自分を持っている感じが伝わってきて、素敵だなぁと素直にそう思った。
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