リナリアの咲く季節には、キミが隣に。
「私、南先輩の好きな人と会いました。実花さんって、とっても綺麗な人ですね」

実花さんの容姿を思い出した。

……到底敵わない。


「あぁ、望月さんと会ったんだ。一つ上の学年だけど、学校じゃ美人で有名だよ」

そりゃそうだ。あれだけ綺麗だったら話題にもなるよ。

「南先輩と実花さん、すごくお似合いに見えました」

「まあ、なんとなく雰囲気も似てるしね」

「なのにどうして、二人は上手くいかないんですかね……」

「菫ちゃんは晴人が好きなのに、望月さんと上手くいってほしいの?」


——そうじゃない。

そうじゃないけど……、素直にそう思えてしまうほど、二人はお似合いだったから。

「……私は最初から、南先輩と付き合いたいとか思ってませんから」

大友先輩の顔が見れなかった。鋭い先輩に、心の中を読まれてしまいそうで。


「……ただ、先輩の寂しそうな顔は見たくないんです。先輩のことが好きだから。すごくすごく好きだから、幸せになってほしい」

言っていて、本心じゃない気がした。

自分の気持ちがわからなくなった。少しムキになっている自分もいる。


……だって、もし先輩と実花さんが付き合ったら、私は確実に落ち込む。それが容易に想像できるから。
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